身内がビッグモーターだ
街路樹に除草剤を撒いて枯らせたことで有名なビッグモーターが「WECARS」という新会社になりました。
しかし今回の「身内がビッグモーター」というのは、その会社の従業員というわけではなくて、行動がビッグモーターという話です。
ミスター・ビッグモーターと磯野波平の違い
他所様の木を勝手に切ったり枯らせたりしていいのかというと、当然ダメです。
一般的な感覚としても、そうですよね。
だから、身内のミスター・ビッグモーターが勝手に他所様の家の木に手を出しているのも、完全NGです。
んで。
民法にもちゃんと条文がありまして、「他所の家の木の枝が越境してきたとしても、勝手に伐採してはいけない」ということになっていました。
一方で「タケノコが越境して生えてきたら、それは生えてきた土地の持ち主(越境された側)が取って食べていい」ということに。
理由としては、
木の枝ならば持ち主の家の土地からはしごを掛けたりして切れるけれど、
タケノコは地中を潜って生えてくるので持ち主の土地から伐採できない、
なんてことになっています。
ここでサザエさんにお詳しい方なら、「波平の結末と違う」と思われるかもしれません。
(波平が作中で、磯野家から隣家に越境させてしまったタケノコを持ち帰っている)
駄菓子菓子、サザエさんは別に間違っていません。
「隣人同士で平和的に解決した」という、民法の望む姿になっているからです。
法律というのは揉めた時にお世話になるものなので、当事者同士で揉めることなく解決できればそれが一番いいのです。
今週のお題「名作」
気がついたら民法233条「竹木の枝の切除及び根の切取り」が改正されていた
という民法233条なのですが、2021年(令和3年)4月に改正・2023年(令和5年)4月施行となっていました。
改正前
1、隣地の⽵⽊の枝が境界線を越えるときは、その⽵⽊の所有者に、その枝を切除させることができる。
2、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
改正後
1. ⼟地の所有者は、隣地の⽵⽊の枝が境界線を越えるときは、その⽵⽊の所有者に、その枝を切除させることができる。
2. 前項の場合において⽵⽊が数⼈の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3. 第1項の場合において、次に掲げるときは、⼟地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
1. ⽵⽊の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、⽵⽊の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
2. ⽵⽊の所有者を知ることができず、⼜はその所在を知ることができないとき。
3. 急迫の事情があるとき。
4. 隣地の⽵⽊の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
Oh, 空き家・あばら家対策って感じですね。
しかしながら、隣家の木を勝手に伐採するミスター・ビッグモーターは、第3項にみじんも当てはまっていません。
週刊現代の記事に、「富士山が見えないからヒノキを枯れ死させよう」という河口湖の事件もありましたが、本質的にはそれと同じ話です。
一体どうしたらいいのでしょうか……。
他人の所有物を勝手に滅殺するのもそうですが、もともとがかなり「狂人の所業」みたいなところがあるんですよ。
注意? 当然してます。
まっっっったく効果がありません。
止めてもきかないから、狂人なんです。
残念ながら、すべての人が良識を持って行動するわけではないからこそ、前述のとおり「揉めた時にお世話になる民法」が存在するのです……。
私は波平が隣人さんと平和的に解決したこと、そして隣人さんが波平と良好な関係を構築していたことを、尊んでおります。